「本当なら、葵の返事を聞いてから嵌めるものなんだろうけど、もう夫婦だから。俺が葵を意識し始めたのは、諦めないひたむきさだった。最初は、よくがんばるなくらいにしか思ってなかったのに、気がつくと社長に企画を提出するたびにがんばれって密かに応援してた」


「そう、だったんだ。ありがとう」


「でもさ、それが最初は恋愛感情なんて気がつかなかった。いや、葵のこと逆にそう見ないようにしてたのかもしれない。同期って距離が一番いいんじゃないかって。それ以上踏み込むと今の関係が壊れそうなのが嫌だった」


同じだ。理由は違うけどお互いを恋愛対象として見ないようにしていたのは同じだった。なんだかそんなところに共通点があるなんて変な感じ。


「でも、葵がどんどん綺麗になってくのが分かって、あいつと歩いているところ見たときにもう、無理だと思った。俺、葵のことが好きなんだって、認めるしかなかった。だから、葵にとっては辛いことだっただろうけど俺にとってはチャンスだった」


「私も、お金は悔しいし、戻ってきてほしいけど辛いことだけだとは思ってない。祐が新しい未来を導いてくれたから」