「見た。葵からもう一度、聞けるかなと思ってとぼけてみたけど営業先から帰りに電器屋に寄って大画面で見た」


「嘘、見たの?あれ。あんな最低のインタビュー」


見てないと思ったのに大画面で見たなんてまさにここに深い穴を掘って潜り込みたい。


「おい、葵。何してるんだ?」


「穴、穴を掘ってるの。恥ずかしい。まさか見たなんて」


「こら、手が汚れるから砂を触るな。嬉しかった。葵があんな風に思ってくれてたこと」


穴を掘り始めた私の手を取り、砂を払うと、祐はその手を包み込むように握った。そして、顔を上げてと言われ、ゆっくりと顔を上げると祐と視線が重なった。


「最初は本当に強引で弱ったとこに漬け込んだわけだし、葵から気持ちを聞いても、あいつより上なのかってそんなことを悶々と考えたりもしたんだ。でも、あんな風に『公私共に最高のパートナー』なんて言ってもらえて自信もついた。だから俺にも言わせてほしい」


祐がポケットに手を入れ、そっと何かを取り出す。それは見覚えのあるもの。祐が買ってくれた婚約指輪の箱。


ゆっくりそれを開けて、彼は私の左手の薬指に嵌めた。