「・・・そんなの俺、知らなかった。てっきり、あの会話で葵さんが優木さんを利用してると思ったから。俺、俺」


「俺がちゃんと葵にプロポーズしたかったし、ちゃんと企画を成功させてから夫婦になりたかった。だから偽装なんて言葉を使った。社長もそれを知ってる。でも、柳。それでお前に辛い気持ちを味わせて悪かった。傷つけて、ごめん」

柳くんの目に涙が浮かぶ。彼は本当に真面目だからきっとすごく傷ついて後悔してるに違いない。

「柳くん、ごめんね。私が誤解を招くような発言を社内でしたのがダメだった。柳くんは、優木くんをすごく慕っているし、尊敬してるだろうからその優木くんを利用してると思った私が許せなかったんだよね」

うつむいて、時折鼻を啜る柳くんの背中を撫でながらそう言った。柳くんが聞いた話が本当だったら私は最低の女だ。そんな女の企画なんて潰したくなるのは当然。

「でもね、安心してほしい。って言うとおかしいかもしれないけど、私、本当に優木くん、祐のことが好きで結婚したんだ。私たちは恋に落ちて、長い間付き合って結婚したわけじゃない。始まりは・・・結婚からだった」

「俺は恋に落ちて、だけどな」

「と、とにかくまあお互い、いろいろあったけど恋愛結婚に間違いないし、利用なんてとんでもない。でも、彼が支えてくれているから企画も頑張れる。彼は私の最高のパートナーだからさ」

「・・・葵さん、本当にすみませんでした」

「や、やめてよ土下座なんて。柳くん、顔上げて。二人とも止めてください」

涙を流しながら土下座して謝る柳くん。そんなことしてほしくない。


「俺、辞めます。ここに多大なる迷惑をかけたし、みんなに顔むけ出来ません。俺が辞めても信頼は取り戻せないかもしれないけど責任はとります」