「やっぱりあれだけ大々的に発表したのと営業先にも誠意は見せたいと思うんだ。実は偽装結婚でしたなんてもし、営業先なんかにバレたら信頼関係なんてすぐに壊れてしまうしさ」

「うん。そうだね。別に偽装にする必要ないしね」

「いや、だからそれは・・・。嫌なんだよ。こんな形式上で結婚しましたなんて。お父さんとも約束しただろ?ちゃんと企画を成功させてプロポーズしてから改めて挨拶に行かせてくださいって。それに・・・」

「それに?」

「企画を成功させるまでは、葵断ちするって決めてるし。だから籍は入れて形式上は夫婦だけどまだ、気持ちの上では偽装結婚でいてほしい」

本当、優木くんらしい。律儀というか、ちゃんと約束を守ろうとしてくれているんだ。

「・・・本当に、企画が成功するまでは貫き通すんだ。なんかそこまで言われるとちょっと惑わせたくなっちゃうな」

「バカ!」

そして、私たちは休みの日にお互いの両親に改めて結婚したいことを伝え、許可を得て、籍だけを先に入れることにした。