「偽装結婚を利用して、俺の名前を利用しろって言ったのは俺の方だ」


「何、言ってるんですか?こんな時までこんな女を庇う必要ないですよ」


「・・・柳、庇ってるんじゃない。事実だ」


「じゃあ、あの結婚式も全部偽装結婚だったんですか?」


柳くんの言葉にだんだんと力がなくなっていく。祐が黙って頷くとペタンと椅子に腰をつけた。


「・・・なんだよ、全部偽装かよ。偽装結婚に偽装夫婦、偽装結婚式。やっとこの会社に来て良かったと思えるようになったのに」


祐がスーツの胸ポケットから一枚の紙を取り出し、柳くんの前に差し出した。


「偽装結婚だけど、ちゃんと籍は入れてある。それは結婚証明書だ。確かに柳が見た結婚式は偽装結婚だった。俺がばあちゃんにどうしても結婚式を見せたくて葵に頼んだ。でも、それも最初は偽装結婚じゃなかった。俺たちはちゃんとお互い好き合って結婚したんだ」


柳くんは祐が差し出した結婚証明書をじっと見ている。そう、私たちはもう籍を入れた立派な夫婦で私の戸籍上の名前は優木葵。


「俺の名前を利用するためにちゃんと籍を入れてほしい」


祐が自分の名前を利用しろと言ったとき、私に頼みたいと言ってきたことが籍を入れることだった。