「・・・こんなはずじゃなかった。もっと大事にするはずだったのに」


「大事にして欲しかったわけじゃない。私。嬉しかったよ」


優木くんに感情をぶつけるように求められて嬉しかった。優木くんは後悔してるかもしれないけれど、そんな後悔してほしくない。


「・・・俺、そんなんばかりだな。プロポーズも結婚式も全部強引で。しかも葵断ちするって言ったくせに、それすら守れてない」


「それでいいの。言ったでしょ?かっこいいところばかりじゃなくていいって。それに私、やっと優木くんを捕まえられたんだから」


「捕まえられた?」


「ずっと、朝まで一緒にいたかったよ」


「もう、無理。もう隠せない。俺、お前の前でもう同期でなんていられない」


「同期じゃないよ。夫婦でしょ」



うーんと寝返りを打つとコツンと何かにぶつかった。そっか、優木くんじゃない祐。彼の方に向き直し、じっと寝顔を見つめる。

まつ毛長いな。寝顔、綺麗だな。肌もすごい透明感あるし、鼻筋も通ってる。


「・・・いつまでも、見られてると恥ずかしいんだけど」


「何それ。それ、女の子のセリフだよ。可愛すぎ。おはよう、祐」


そう言って布団を鼻まで上げて顔を隠す祐。昨日たくさん時間を掛けて抱き合って、話して、また抱き合って。


初めて一緒に迎えた朝、私は、彼を名前で呼ぶことにした。もう、私たちはちゃんとした夫婦だから。