僕は大学を卒業してすぐに都内の企業に就職した。営業職だった為、外回りに明け暮れる毎日だった。どうして自分がこの仕事を選んだのか、その理由が自身でもつかめずにいる。


僕は会話が上手な方でもなかったし、愛想がいい訳でもなかった。でも、何故かその仕事がいいとそう思えたのだ。通り過ぎた見知らぬ人のバッグからふと鈴の音が響いて引き寄せられたような、そんな些細な、でも心地よい予感だったのかもしれない。