『ハルキ』…
呼び慣れないフルネームで呼ぶ
いつもと違う呼び方に、彼は気づいているだろうか


「あんなことされて…私変わったよ
一方的で、自分勝手で…
演じるとか言われた時、何が本当なのかわからなくなった
全てが嘘じゃないかもしれないって頭ではわかっていても、今まで見てきたハルキの全てが嘘に思えてしまうの
話したよね?私の過去の経験…男に騙された経験の数々

それなのに…こんなことされたら私は、もう男を信じる心は失われた
信じる方法なんて、忘れちゃった」


「…っ…」


考え方の問題じゃない
そうなりたくてなったんじゃない
できることなら、まだ信じたい
でも、もうできないんだ
できなくなってしまった
この闇の抜け道は完全に塞がれた
私はもう、抜けられない

辛そうに顔を歪める彼を、私は真っ直ぐと見つめる
君の表情の一つや二つでは、私の心は1ミリも揺らがない