「…
亜由、休憩時間、大丈夫?」

時計を見れば、もう50分も経過

「ん、あと5分くらい
そろそろ行こうかな
でもさ、根本的に合わないって言われたら、もうどうしようもできないじゃん?
じゃ、またね」

…亜由のそういうストレートなところ、好きだよ
でも今は、ちょっときつすぎるかな
胸にささるよ

時間になった漫喫を出て、賑わう町、鮮やかな道をまた彷徨う

「戻るか…」

気は重いけど、このまま帰っても何も変わらないし、ひとりでいた方が辛い…
ならせめて、誰かといたい

戻ると、豪華に並んでいた料理はほぼなくなっていて、オシャレにドレスコードしてきた女子たちは熱唱していた

「ゆか…大丈夫?」

ミホの問いには、苦笑するしかできなかった
けど、きっとわかってくれてる

2次会から、男子も加わって、こっからがメインの一番楽しい時間
でも、その時間は、私は結局表面だけの笑顔で終わった
なんの気持ちもこもっていない、ただの表ヅラ
仮面をかぶったみたい…

仮面が取れた回数は、密かに泣いた回数
ミホだけが、その理由を知っていた
そして、側にいてくれた

ミホしかわからないから…


基本、私はこのサークル内では少し…いや、かなり目立っている
1年の時から、飲み会とか大好きで、先輩とオールしまくっていた
海外育ちで敬語が苦手なため、先輩にも平気でタメ口きいてる
そのおかげで、先輩との距離は近く、会長、副会長、次期会長と私の4人が「飲みイツメン」だった
3男2人、2浪の2男1人、そこに加わる、現役の1女
最高のポジションで目立ち、練習なんて行かなくても名前はサークル全体に知れ渡っていた
ついたあだ名は「とにかくぶっとんでる1女」「オール大好き先輩潰しの1年」「オールナイトクイーン」などなど…とにかく色んな意味で『やばい1女』イメージだった
だけど、その反面、いつも明るくて、大声で喋っていながら、悩みなんてないかのように、常に笑っていた
拗ねることはたまにあっても、落ち込む姿なんて見せたことない
それが、このサークル内での「ゆか」だった

そんな私が泣いた
そしたら、みんなどう思う?
どのような反応見せる?
困る人が多数、バカにする人が少数
本気で心配して、大丈夫?と声かけてくれる人は、この場にミホしかいないんだ

そういう面で、私はミホがいてくれてよかったと思う
ミホが唯一、彼氏持ちの同学年

集合写真を撮って、帰る人はそれぞれの家へと帰っていった
今日も残ったのは多くないけれど、3次会はありの方針
と言っても、決めるのは私たちなんだけど
残った2女は2人、私とミホ
元々今日3人しかいなかったし

3次会はあり…
単なる「帰りたくない」と連呼する私のわがままを、ミホが聞き入れてくれた
私は一体どこまで、ミホに迷惑をかけるんだろう…
ごめんね、でも、今日だけ、今日だけは許して
今の私は、誰かに頼らないと立っていられないから、支えがなくなってしまえば、その場で崩れる


誰かと一緒にいれば、表ヅラだけでもまだ笑えると思った…

思ったのに…