「・・・頑張れよ」

「え・・・。あ、ありがとう」



シドは照れ臭そうに視線を外す。
そんなシドを見て梨乃も頬を赤らめ、ぎこちなく前を向いた。

さっきまでの緊張のドキドキが意味を変える。



「まずは、国王が皆様の前に立ち話をされ、プリンセスを紹介いたします。呼ばれたらここから中に入り国王の横に並んでください」




クロウがそう説明し、扉の前に梨乃を立たせる。
扉の向こうから、人々の話す声が漏れ聞こえてくる。
和やかな雰囲気が伺えた。


しばらくすると、パーティーの開始を告げるオーケストラの音楽が奏で始める。
人々のざわめきが落ち着き始めた頃音楽が静まり、続いて国王の声が聞こえ始めた。



「もうすぐ・・・」

「ええ。大丈夫です。プリンセスはよく頑張っておられました」

「・・・うん」



クロウの励ましが自信に変わる。
ずっと付きっきりでレッスンをしてくれたクロウに、誇れる姿を見せられるように。
梨乃は顔をあげ表情を引き締めた。



「いってきます」




扉がゆっくりと開き、力強くそう言うと堂々とした姿で足を踏み出した。