「・・・おう」
「ゴホン!」
「・・・っ。本日一日プリンセスの護衛をさせていただきます」
咳払いで圧力をかけられたシドは、渋々そう言って頭を下げた。
「よろしくお願いします」
梨乃はそう言って笑った。
「では、まいりましょう」
クロウに促され、梨乃は頷いて歩き出した。
トクトクと緊張に鼓動が早まる。
この日のために一生懸命レッスンしてきたのだ。
プリンセスとしてのマナーも、ある程度は教えてもらってきた。
後は、堂々とするだけ。
梨乃は心の中でそう繰り返し、心を落ち着かせようとする。
「おい」
「え、なぁに?」
後ろを歩いていたシドが小声で呼びかける。
少し振り返りながらシドを確認する。