梨乃は、カノンの隣にしゃがみ込む。
「カノンくんは偉いね」
「え?」
「カノンくんは、自分の仕事に誇りを持ってて。そのために頑張ってる。私も、頑張らなきゃ」
梨乃は手を伸ばし綺麗に咲く花に触れる。
花はユラユラと梨乃の手により揺れる。
「偉い・・・、僕が?」
「うん。偉いよ」
「偉い・・・へへっ。褒められたのなんて初めて。嬉しい」
照れくさそうに笑い、腕に顔をうずめ隠した。
「初めてなんて大げさだよ。お母さんとかに褒められたことあるでしょ?」
「お母さん・・・。僕、お母さんいないから」
「え・・・、あ、ご、ごめん・・・」
シュンと落ち込んでしまったカノンに梨乃が慌てて繕う。
カノンはそんな梨乃に笑って見せる。
「気にしないでください。お母さんの記憶ないから。そんな気にしないでください」
カノンの笑顔はとても寂しそうで、梨乃は胸を痛めた。