「でも、花壇を見た人の顔が見られないのが残念なんだ」
眉を下げ、カノンが悲しげに言った。
自分が育てた花を見る人の顔を見るのが好きだった。
綺麗だと言ってもらえたら幸せだった。
「ふふっ」
「え?なんですか、梨乃さま」
「ううん。カノンくん、とってもいい顔してるなぁって」
「いい、顔?」
「ごめんね。悲しそうな顔なのに、いい顔なんて。でも、本当に花の事が大好きで、この花壇に誇りを持ってるんだなって思って」
肩を竦めにっこりと笑った梨乃。
カノンはそんな梨乃に思わず見惚れ、ぼんやりと見つめた。
「カノンくん?」
そんなカノンに首をかしげ梨乃が問う。
カノンはハッとして首をぶんぶんと横に振った。