「・・・プリンセスは、不思議な人です」
「は?」
「普通、王族というものは人の上に立ちその権威を掲げるものだと。しかし、プリンセスは・・・。俺と同じ位置に立とうとする。共に楽しむことを望まれる方」
ロイは、まるで独り言のように話し出す。
シドは、黙ってそれを聞きながら視線をダンスホールへ戻す。
「俺には、それがよくわからない」
「・・・お前、ひねくれてんな」
「なっ、なにを言う」
「あいつに、裏なんかねぇよ」
シドはそう言うと静かに歩き出した。
ロイはその背中をしばらく見つめた後ゆっくり歩きだす。
「あなたに諭されるなんて、俺もまだまだだな」
歩き出したロイはそう言うと、一度ダンスホールを振り返り振り切るように前を向いた。