「にぎやかだな」



ダンスホールの前を通ったシドが立ち止まり顔を向ける。
中からは音楽が漏れ聞こえていた。



「今は、プリンセスがダンスレッスンを受けている最中だ」



シドの言葉に、ロイが短く答えた。
それはいつも厳しい眉間にしわの寄った表情。




「プリンセス・・・ああ、あいつか」

「・・・プリンセスをあいつ呼ばわりするとはなにを考えてるんだ!」



眉間に一層皺をよせ睨みつけるようにロイが言った。
シドは肩を竦めロイを見るとすっと視線を外す。



「どうしてプリンセスがあなたみたいな人を選ぶのか、私にはわからんな」

「・・・そんなの、俺だってわからねぇよ」

「え?」



ボソッと呟いた言葉はロイには届かなかった。
シドはステンドガラスになっているダンスホールに繋がる窓をじっと見つめる。