「これからクロウさまとダンスレッスンですので、ダンスの時用のドレスを選びましょう」

「ありがとう」




セレナがドレスを選んでくれているのを待ちながらすぐに着替えられるように着ているドレスの紐をほどいていく。
自分でできることは自分でしたい。
プリンセスになったからといって、そこだけは譲れない。
それが梨乃の想いだった。




「それにしても、噂になっていますよ」

「噂?」



セレナが選んだドレスに着替えながら、セレナの言葉に首をかしげた。




「赤髪の男が、騎士として入隊したと」

「あ・・・」

「メイドたちはすっかり怯えてしまって」

「え、そうなの?」

「それは、恐ろしい噂の絶えないお方でしたから」




そっか・・・。
梨乃は呟きながら切ない思いを抱く。

怖ろしい噂が立つようなことを、シドはしてきたのだろう。
なにもないところに噂なんて立たない。


それが事実であれ、膨れ上がった虚像であれ。
その噂が、“シド”自身だと思われてしまう。