「まったく。あなたという人は、もう戻ってくるなといったでしょう」

「・・・戻ってきたくて戻ってきたわけじゃねぇ」



客室に入ったクロウが呆れたように言うと、中にいたシドはふて腐れたようにそう答えた。
クロウは、シドの前の椅子にそっと座る。



「もう、やめたらどうですか?」

「・・・」

「こんな生活。あなただって望んではいないでしょう」



クロウの言葉に、シドは黙り込む。
深くもたれかかって考え込むように唇を噛んだ。
その姿を、クロウはまっすぐ見つめ、返事を待つ。




「俺の瞳が、綺麗だって。あいつは言ったんだ」



ポツリと、囁くような声。




「俺に、できるかな。俺の手は、こんなに汚れてるのに・・・」

「あなた次第ですよ。・・・まぁ、私は反対ですがね」



からかうような口調でそう言ったクロウ。
顔をあげたシドがクロウを見ると、肩を竦めたクロウは立ち上がった。