どうしてそんなにも彼が気になるのかわからない。
それでも、気になって、惹かれて仕方がない。
男を追いかけてはだめだ。
気づかれないように回り込んで先にシドに会わなきゃ。
梨乃は一本先の裏道に入り一心不乱に走った。
土地勘のない梨乃は不安になりながらも必死で走る。
途中で左に入り男の入った裏道を探す。
路地裏の通りに出て、左右を確認する。
その先に赤い髪を見つけた。
しかし、その後ろにすでにあの男が迫っていた。
「お前!赤い髪の男!お前みたいなゴミは、死んで役に立て!」
男はそう叫びながらシドに向かって行く。
梨乃は、咄嗟に駆け出していた。
「やめてぇ!」
両手を広げシドの前に飛び出す。
男は一瞬怯んだが、勢いを止めることはできずナイフをつき出した。
ナイフは梨乃の左腕をかすった。
「っ」
激痛に顔を顰める梨乃。
男は、ガクガクと震えながらナイフを落とした。