でも。
その中で、真紅のような赤を見つけた。
その赤を隠すかのように太めのバンダナを頭に巻いているが見えているうえ部分は、綺麗な真紅。
梨乃は考えるより先に身体が動いていた。
「プリンセス!」
思わずロイが叫ぶ。
伸ばした手は、梨乃には届かずからぶる。
走り出した梨乃は、まっすぐその真紅へと向かっていた。
「シド!」
呼んだ名に、その背中がピクリと動いた。
伸ばした手がその腕をとった。
「シド!あなたシドでしょう?」
身体を前に回り込ませ、見上げた。
それは紛れもなくあの時の彼で。
シドは怪訝な顔で梨乃を睨みつけた。
「馴れ馴れしく人の名を呼ぶな」
切り捨てるようにそう言った。