「あいつはああいう男なんですよ、プリンセス」
クロウは小さくそう呟くと、シドを追うように階段を上がっていく。
「もう、問題は起こさないでいただきたい」
「それは、自分のためか?」
「この国のためです」
階段を出たところで待っていたシドにクロウは告げると今度はシドの前を歩きだした。
シドも、大人しくそれについて歩き出した。
「あの女、プリンセスだとはな」
「・・・」
「そんな怖い顔すんなよ。なにもしねぇよ」
険しい顔で振り向いたクロウに笑いながらシドが言った。
からかうようなその口調にさらに眉間にしわを寄せクロウは視線を前に向ける。
「ただ・・・」
そんなクロウの背に、少しためらいがちな声が届く。
「あの女の作る国がどんなものか・・・興味はある」
その言葉に一瞬止まりかけた足を無理やり隠すように前に伸ばす。
そんな言葉が、シドの口から出るなんて・・・。
信じられなかった。
2人の間に、なにかがあったというのか。
クロウは一層表情を険しくさせた。