「・・・もういいのかよ」



シドは縛られ赤くなっている手首をさすりながら目の前に立つクロウにそう言った。
クロウは眉を寄せシドを見つめる。



「ケンカを吹っ掛けたのは相手側だという証言が取れましたので。やりすぎではありますが、正当防衛の範疇だと判断いたしました」

「・・・あっそ。それはどうも」

「しかし、二度目はありませんよ。もう、戻ってくることのないように」

「それはどうかな」



そう言ってニヤッと笑うとシドは鞄を手に取った。
肩に下げると肩を回し伸びをして歩き出す。



「どうもお世話になりました。とでも言えばいいか?」



馬鹿にしたような声色でそう言うと牢の扉に手をかける。
その先は階段になっていて外に繋がっている。

カチャッと音を立て扉を開いたとき、クロウがシドに呼びかける。



「騎士に、なるつもりは?」



その言葉に、一瞬手を止めたシドだったがすぐに扉を大きく開いた。




「俺の手は、人を護る手じゃない。人を、壊す手だ」



そう言うと階段をゆっくり上がっていく。
一度も振り返ることもせずただまっすぐに。