「それに・・・。あの男自身がそれを受け入れるとは到底思えません」
「・・・」
「あの男に、誰かを護る、そんなことができるはずがありません」
はっきりとそう言いきるクロウ。
梨乃は黙ってその言葉を聞く。
「・・・わかった。じゃあ、いい」
「プリンセス・・・」
「他に、してほしい人なんていませんから」
視線をすっと外して窓の外へと移した。
クロウは苦渋の表情を浮かべる。
まさか、そんなことを言いだすとは思わなかったのだ。
あの男のどこに惹かれているのか。
クロウにはさっぱりわからなかった。
「また、夕食の頃呼びに参ります」
クロウはそう頭を下げると部屋を出て行った。
パタンと絞められた扉。
静まり返った室内。
梨乃はただ外を眺めていた。
「籠の中の鳥みたい・・・」