「え・・・?」

「あの人・・・。赤髪の・・・、シドがいい」



クロウは目を見開き耳を疑った。
今梨乃は何と言ったか。

聞き間違いでなければ今梨乃は、シドなどと。

クロウはしばらく言葉を発することができなかった。



「・・・っ、なにを言っているんですか!あの者は、犯罪者ともいえるような・・・危険な人物ですよ!」

「でも!・・・私、あの人がいい!あの人じゃなきゃ嫌!プリンセスなんか、やらない!」




まるで駄々をこねる子どものよう。
それでも、どうしても彼がよかった。

理由はわからない。
あの一時で彼の何かに惹きつけられたのを感じた。

目を反らせなくなる。
もっと、知りたくなるような。


恐れにも似た。
怖いもの見たさ。



わからない感情がうずいた。



「プリンセス、いくらプリンセスの願いでもそれだけは聞けません!」




クロウは、そう言うしかなかった。
受け入れられるはずなどなかった。