「ただいま」



閑静な住宅街にある2階建ての一軒家。
そこが梨乃の自宅。



「おかえりなさい、梨乃ちゃん」



専業主婦で優しいお母さんと、サラリーマンの大黒柱であるお父さん。
ごく普通の家庭で生まれ育った。

何気ない日常、当たり前の毎日。



「ご飯まで勉強してくるね」

「頑張ってね。進学決めたの?」

「・・・まだ悩み中なの」



梨乃は母にそう告げ二階へ上がった。
将来どうするのか。
いまだにはっきりと考えられずにいた。

自分がしたいことはなんなのか。
進学するか就職するか答えを出す期限は着々と近づいてきている。


それでも、いまだ答えが出ないのは・・・。



「はぁ」




梨乃は小さくため息を吐いた。