「シド、泣いてるの?」

「な、泣いてねぇ!」

「嘘。泣いてるでしょ。顔、見せてよ」

「泣いてねぇし。見せない」



身体を放そうとする梨乃を、抱きしめて放さない。
梨乃はその顔を見ようと必死で身体を捩った。



「わたしが帰ってこないと思った?」

「・・・っ、だって、お前の大事な家族がいる場所だろ」

「わたしの事ね、やっぱり覚えてなかったよ」

「・・・そうか」

「でもね。私の部屋はそのまま残っててね。私がいた証は残ってた」




身体を離すことを諦めた梨乃は抱きしめられたまま会ったことを話す。