「記憶・・・。プリンセスの事を覚えていない世界に戻したという事ですか!?」



クロウがハッとしたように叫ぶ。
そんな残酷すぎることを。


「それでも、すべてが消えているわけではない。あの子があの世界で生きていたという証は、確実にあるはず・・・。その世界を選ぶのも、この世界を選び戻ってくるのもあの子次第」

「もし梨乃が、この世界を選んだなら、戻ってくるっていうのか」

「ああ・・・。しかし、それは半日以内に・・・。それ以上はわたしの魔術が持たないからね」




梨乃の気持ち次第。
その答えに、シドは拳を握りしめた。


梨乃自身がこの世界に戻りたいと思わない限りこの世界に戻ることはできない。
その事実が、重くのしかかる。