「それは、戻るすべがなかったからの事。戻れるのなら、戻りたいと思うはず」

「そ、それは・・・」



シドは動揺し視線を彷徨わせる。
梨乃の想いはどうだったのだろう。

本心を聞いたことはあったろうか。


梨乃はいつだって一生懸命でまっすぐで。
この国のために懸命だった。




「わたしの力はもう衰えてきている・・・。あの子を返してあげられるのはこれが最後だ・・・。魔術師の需要はもうなくなってしまったからね。後継者もいない・・・」

「プリンセスのためにしたと言いたいんですか」

「そんなおこがましいことは言えないが・・・。わたしにできるのはこれだけ・・・。異世界の人間の記憶まで戻すことはできなかった」