「プリンセスの周りは、いつも笑顔の花が咲いているようですね」




笑の声を止め、ロイが隣に立つクロウに話しかけた。
視線は、海の中ではしゃぐ梨乃を見つめながら。



「ええ。あのお方は、本当に不思議な方です」

「クロウさま。俺は、騎士という仕事に誇りを持っています。騎士として、お仕えする主を第一に考え、敬い、護っていくそれが騎士の仕事だと思っていました」

「ええ」

「ですが・・・。プリンセスは、俺に他の方とは違う事を求められました」




ロイは、初めて梨乃につき城下に行った時の事を思い返していた。
騎士として、騎士団団長として、恥じないように。
きちんと任務をこなし、何事もなく終わらせることが、自らに課せられた責任だと信じて。




「共に楽しむ・・・。任務だから、と断ってしまったあの時の自分に喝を入れたいです。ただ、マニュアル通りに、任務通りにすればいいわけではないと。護っている自分も、護るべき主も、生きている人なのだということを、プリンセスに教わった気がします」