「プリンセス。城に戻りましょう」
「待って!せめて、お願い!その人怪我をしているの。手当はしてあげて!」
「・・・そのように手配しておきます。さあ、こちらへ」
半ば強引に連れて行かれる梨乃。
チラチラと後ろを振り向くが、赤髪の男は抵抗する様子もなく側に来た騎士に従い歩き出したのが見えた。
そんな梨乃をクロウは少し心配げに見つめた。
「梨乃さまぁぁぁ!!」
「梨乃さま!」
城に戻ると、梨乃の帰りを待っていたミオとセレナが取り乱しながら駆け寄った。
驚き目を見開いた梨乃だったが、とても心配をしてくれていたことを知り申し訳なく眉を下げた。
「心配をかけて、ごめんなさい」
「はいぃぃ。とってもとっても、心配しました!でも、ご無事でよかったですっ」
ミオは涙を流しながら喜び安心した様子だった。
そんなミオを慰めながらセレナもホッとしたように笑う。
「ありがとう、二人とも」
心配してくれる人がいてくれる。
そのことを知っただけでも、梨乃の心は少しだけ救われた気がした。