「今、シド。あなたは、誰よりもプリンセスの側にいることを許された人です。その人にしかできない護り方というものが、必ずあると思いますよ」
「俺にしか、できない・・・」
「敵ばかり見ていませんか?シド、あなたはプリンセスをちゃんと見ていますか?」
クロウに投げかけられた言葉。
シドはハッとしたように顔をあげる。
襲撃を受けた時の、不安そうな顔。
自分が側にいることができたのに、そんな顔をさせてしまっていたことに気づいた。
「俺は・・・、戦いたいんじゃない・・・。そうだ、護りたいんだ・・・」
剣を振るうことはできずとも。
梨乃の心を護ることはできる。
梨乃の暖かな笑顔を、温もりを護ることは。
「・・・俺は、バカだ」
「そんな事、ずいぶん前から知ってましたがね」
「ありがとう、兄貴」
「手のかかる弟を持つと、兄は大変ですね」