「二人とも、大丈夫ですか?」
「うん・・・。クロウ、皆は?」
「ええ。誰もけが人はおりませんよ。ご安心ください。騒動は終息しました」
「そうか・・・」
クロウの言葉にホッとする梨乃。
みたところ、本当に怪我はないようだった。
「少し先に、休める別荘があります。そこで一度休みましょう。拘束した者を連れて行かなければなりませんので、プリンセスには少しそこで休んでいていただくことになります」
「うん。わかった」
「可能なら、旅行は続行できるよう取り計らいますので、ご安心ください」
「ありがとう、クロウ」
クロウは優しく微笑むと扉を閉めた。
そして、ゆっくりと再び動き出した馬車は、穏やかに揺れながら二人を運んでいく。
黙ったまま、なにやら考え込んでいるシドをチラリと横目で見ながら、梨乃は少し悲しげに目を伏せた。