「行かせませんよ!」
男を後ろから引っ張り、馬車から引きずりおろしたのはクロウ。
男は、抵抗したが、クロウに抑えつけられた。
「シド!扉を閉めなさい!絶対に出てきてはいけませんよ!」
「俺も・・・っ!」
「バカ言わないでください。あなたは、もう護られる側です!さっさと閉めなさい!」
クロウに言われ、唇をかみしめながらも扉を閉める。
悔しさに拳を握りしめながら振り返ると、不安そうな梨乃に気づいた。
「・・・悪い。大丈夫だ。俺がいる」
安心させるようにそう言うと梨乃の身体を抱きしめた。
抱きしめながら、悔しさで唇をかみしめた。
そんなシドの空気に、なんとなく感づいた梨乃は、複雑な思いを抱きながら、皆が無事であることを祈る。
しばらくすると、外は静かになった。
馬車の扉が開かれ、顔を出したクロウに、梨乃はホッとした。