ガタガタっ!
突然、馬車が急停車しつんのめるようにして前に傾いた身体。
シドが梨乃を護るように腕を回しきつく抱きしめた。
「な、なに?」
「なにかあったのか?」
馬車が止まると、外が騒がしいことに気づく。
怒号のような声、その上剣が交わるような金属音まで聞こえた。
「シ、シド」
「ああ・・・。なにかあったみたいだな」
シドは梨乃を椅子に座らせると、外の様子を伺うように扉に近づく。
その時、外から扉が乱暴に開かれた。
「・・・っ!?」
あけたのは、見知らぬ薄汚れた衣服を着た男。
「貴様!」
シドが、梨乃を護るように身体を梨乃と男の間に滑り込ませた。