「シドさま。次の公務のお時間です」
婚姻式も無事終わり、本格的にシドの公務も再開された。
シドの側近にはクロウがつくことに決まり、クロウはあわせて梨乃の教育係も引き続き兼任している。
「・・・わかってるよ」
「ならばお急ぎください。馬車を待たせております」
「・・・だー!兄貴に畏まられるのほんと慣れねぇ!」
「慣れてください」
クロウは何事もないかのようにシレッと流す。
そう言った毅然とした態度にもシドは気に入らずムッとする。
自分がものすごく子どもに思える。
「・・・兄貴は、嫌じゃないのかよ。弟だし、元は部下だったのに」
「いえ。私は。逆に、嬉しいんですよ。弟の成長は」
「は?」
「こんな風に、兄貴と呼んでもらえる日がくるとはね」
クロウはそう言って笑い、またしてもシドは調子を狂わされるのであった。