「え?キス・・・?」
きょとんとした梨乃を見て、げ、と顔を歪める。
梨乃は覚えていないのだと気付き、いらないことを言ってしまったと口を抑えた。
「え、何?なんのこと?」
時はすでに遅く、梨乃は好奇心旺盛に尋ねる。
「――――っ、お前が、熱で倒れてる時。一度訪ねたんだよ」
「・・・え」
「その時、お前が・・・可愛いこと言うから・・・」
尻すぼみにそう言いながらちらっと梨乃を確認するように見る。
すると、梨乃は固まり顔を真っ赤に染め上げていた。
「え・・・あ、あれ・・・?あれって、夢だったんじゃ・・・」
「は?」
「いや、私が、都合のいい夢を見てたんだって思って・・・ボーッとしてたし、え、うそ・・・」
顔を覆い真っ赤な顔を隠す梨乃。
そんな梨乃を見て、悪戯心が刺激されたシドはにやりと笑った。