「く、く、クロウさまぁぁ!!」
慌てた様子でクロウの執務室にやってきたのはミオだった。
髪を乱れさせ、肩で息をしながら半泣きでやってきた。
「どうしたんです、騒々しい」
「そ、それが・・・っ!り、梨乃さま・・・梨乃さまが!」
「はい?」
怪訝に眉を寄せ、持っていた書物を置き立ち上がる。
ミオが深く息を吸い込み吐き出すと、気分を落ち着かせ、改めてはっきりと告げた。
「梨乃さまが、どこにもいないんです」
「・・・なっ。くまなく探したんですか?」
「はい。今も城内を捜索中なんですが・・・。どこにもいらっしゃらなくて・・・」
クロウは頭を抱えた。
日に日に口数も少なく、思い悩んでいたことには気づいていた。
あまり触れず、見守る方がいいかとしばらく様子を見ていたが・・・。
それほどまでに追いつめられていたのか。
大切な家族、思い出があったはずの世界が全て幻だと知らされた絶望。
深く傷ついたに違いないのに。
寄り添ってあげることが、できなかった。