「ちょっ、やめ・・・」
「だ、黙れ!こ、こうするしか手はねぇんだ!こ、殺されたくねぇ!」
男はそう震えながら言った。
怯えている。
なにに?
あの、赤髪の男に・・・?
「ああああんな男に、ケンカ売るつもりじゃなかったんだ!あいつだと知っていれば!」
「え・・・?」
「あいつは、人じゃねぇ!」
怯えたように赤髪の男を見つめる。
なにがそこまでこの男を怯えさせるのか・・・。
梨乃は考えながら赤髪の男を見た。
「・・・人じゃない俺が、そんな女の命に躊躇うとでも思っているのか」
赤髪の男ははっきりとそう告げた。
初めて聞く声。
それは、思いの外澄んだ声だと梨乃は思った。
「う、うるせぇ!」
男は隠し持っていたナイフを取り出し震える手でつき出した。