「・・・こんなものを見せて、どういうつもりだ」



少し苦しげな声でダークが言う。




「私、ダーク国王は、冷たくて、とても厳しい方なのだと思っていました」

「・・・」

「すみません。ですが、そのノートを見て、見方が変わったんです」

「変わった?」

「はい。ですが、カノンの母アリスさんは、あなたの事を心から愛していた。自分の身分のせいで、あなたの足を引っ張らないように自ら身を引くほど」





真っ直ぐ、ダークを見つめながら訴えるように話す。
謁見のために用意された部屋の中は、シン、と静まり梨乃の声だけが響いていた。




「それはきっと、アリスさんが愛されていたからだと思うんです。あなたも、アリスさんの事を、本当に愛していたんじゃないですか?」

「・・・戯言を」

「たとえそうではなかったとはいえ、それでも。アリスさんに思われる“なにか”が国王にはあったんだと思います。非道で厳しいだけではなく、きっと私たちの知らない、見えない“何か”が」