「これは・・・」
「我が城の庭師、カノンの母親が残していた日記です」
「・・・カノンの、母親」
ピクッと反応したダークは一瞬視線を梨乃にうつし、すぐにそのノートへと移した。
一瞬、開くのをためらったが小さく息を吐き出し、ノートを開いた。
「そこには、カノンへの想いと共に、ダーク国王への想いも綴られています。この城で過ごした日々の事、思いのすべてがそこに記されています」
「・・・」
梨乃がそう付け足すと、ダークは淡々とノートを捲っていく。
視線はそこに記されている文字をなぞる。
梨乃は、息をのみその様子をじっと見守る。
――カノンくん、これヘルスター王国のダーク国王に見せたいの
――え・・・?ダーク国王に・・・?
――うん。カノンくんは、まだ許せないかもしれないけど。お母さんの想い、あの方にも知ってほしいと思うの
ここに来る前に、カノンと交わした言葉を思い出す。
梨乃の提案に、カノンは笑って許可してくれた。
――あの人も、きっと救われていいはずだから
そう言って笑った。