「名前を貸してくれた人は、僕の父親になろうとしてくれてたんだ・・・」




梨乃の口から話を聞いたカノンは、放心した顔で呟いた。
開いた瞳から、一粒ポタッと涙が零れる。



「カノンくん・・・」

「ごめ・・・ごめんなさい。なんだか・・・嬉しくて」

「うん」

「ノート・・・、読んでもいい?」




ごしごしと涙をぬぐいながら梨乃から渡されたノートを掲げる。
梨乃はうん、と頷きながらカノンの隣に座った。




「梨乃さま、一緒に読もう」

「え?いいの・・・?」

「うん。読んでほしいです」




潤んだ瞳で梨乃を見上げそういう。
梨乃は「わかった」と頷き、ノートに視線を落とした。