「ですが、カノンを生んだ後、母親が体調を崩し・・・。余命幾ばくもないことが分かったそうです。その方は、カノンは自分が育ててもいいと言ったそうですが・・・、母親はカノンを連れ、その方の元を出て行ったんだそうで・・・」

「本当の、父親になろうとしてくれていたんですね・・・」

「おそらく、迷惑をかけるのが嫌だったんだろうと・・・。助けた時から、母親はうわごとのように謝っていたそうですから」




ハンカチで口を抑え、涙ぐみながら話すアリア。




「その話を、伺った後、・・・これを預かりました」

「・・・ノート?」

「母親の、日記だそうです。随分以前からのものだそうで、その方はあまり読まないほうがいいと思い読んではいないそうなんですが。これは、カノンに渡した方がいいと思いまして・・・」

「・・・はい」




梨乃はそのノートを受け取る。
カノンの、母親の想いが綴られたノート。



「このノート、お預かりしてもいいですか?私から、カノンくんに話をさせてください」

「もちろん。そのつもりでプリンセスにお渡ししたのです」



そうして、アリアは深く頭を下げ帰っていった。