梨乃は、しばらく黙り込む。
特別に・・・。




「・・・特別に、思ってる・・・。シドの事、特別な存在として・・・。私は、シドが好き」




自分に確かめるように呟いた。
でも、その後でギュッと手を握る。




「でも、私がどうするべきか、ちゃんとわかってる。私は、シルスタ王国との友好のためにも、レノンさまと婚姻を結ぶ。それが、一番いいことだとわかってる」

「・・・」

「プリンセスになるって、決めたのは私。ここで生きるって決めたから。シドの事がいくら好きでも、叶わないこともあるって・・・ちゃんと理解するつもり」

「・・・梨乃さまの気持ちが、聞けて良かったです」





カノンは、にっこりと笑う。
その笑顔に応えるように梨乃も笑った。



全てが思い通りに行くわけじゃない。
例え、思った関係で側にいられなくても。
離れ離れになるわけじゃない。



そのために、シドの戻ってくる場所をつくる努力をしているのだから。