エスターンに戻った梨乃は、レッスンに公務にと慌ただしい日々を送った。
長らく、王座の抜けていたドーベル王国には、新しい王が着任し、少しずつ再建し始めている。
そして、ヘルスター王国は、挙兵もなく静けさを保っていた。
「お疲れ様です。梨乃さま」
「うん・・・。ありがとう、カノンくん」
久しぶりに訪れた中庭で、ベンチに座りカノンと会話をする。
やはり、この場所は落ち着くと空を仰いだ。
「一つ、伺ってもいいですか」
「うん?」
「梨乃さまは、シドさまの事どう思われているんでしょう」
「・・・え?」
隣に座ったカノンからの、思いがけない問いかけに息を詰まらせ仰いでいた視線をカノンに向けた。
「どうって・・・」
「特別に、思われているような気がしたので」