久しぶりに訪れるこの場所は、ひどく空気が重く感じられる。
重苦しい雰囲気に、飲まれるわけにはいかない。
覚悟を決めた梨乃は一度だけ大きく深呼吸をした。
「大丈夫ですか、プリンセス」
「うん。いきましょう」
梨乃たちの前にそびえ立つのはヘルスター王国の王城。
ぐ、と拳を握りしめると体の力をふっと抜いて歩き出した。
従者に手続きを踏むと謁見の間に通される。
2度目のその場所に、梨乃は決意を胸に挑んだ。
「よく来られた。エスターンのプリンセスよ」
「突然の訪問、失礼いたします。国王様。・・・プリンセス」
国王の隣には、ユリネの姿もある。
梨乃の姿を見た瞬間、驚きの表情を浮かべたユリネ。
そこで初めて、暗殺の失敗を知った。