「シド!」
シドが療養している部屋に毎日顔を出している梨乃。
その姿はイキイキとしていて、今までの思い詰めていた表情はすっかりなくなっていた。
「毎日、来なくていいんだぞ」
「私が来たいから来るの。いいでしょ?」
「・・・いいけど」
夢のようだった。
もう、戻ってくることなどできないと思っていた。
それでも、不安は尽きない。
自分が戻って来たこが気づかれると、もしかしたら挙兵してくるかもしれない。
ユリネに、権限はないとはいえ、その動機を利用して戦の大義名分にされてしまえば・・・。
取引をして、ヘルスター王国に行った。
そのことは、事実なのだから。
「シド?」
「あ?」
「・・・大丈夫だよ。シドの事は、ちゃんと私が護るから」