「お前は、バカです」
ずっと黙って聞いていたクロウが、はっきりとそう告げた。
「なぜ、黙って出て行ったんですか。お前は、プリンセスの専属騎士になるんじゃなかったんですか?」
「・・・護りたかった。ああするしか」
「本当に、他に方法はなかったのか?なぜ教えてくれなかった。他の方法を、どうして探そうとしなかったんですか」
「・・・っ」
「お前はバカだ。一番楽な方法を選らんで。自分が居たい場所を自ら手放すなんて。そんな事、バカがすることです」
ずっと、抱えてきた苛立ちをぶつける。
護りたいと思うものは同じなのに。
どうして、一人で抱え込んでしまうのか。
結局、護りたいものを手放してしまうなら、意味がない。
「・・・俺には、こんな方法しか、思いつかなかった」
「それは、私のせいですね。あなたと、ちゃんと話をしてこなかった・・・。兄弟と言えど、今更と、気恥ずかしさに、後回しにしてしまっていた私のせいです」