しばらく馬車に揺られていたが、いつの間にかその揺れが止まったことに気づいた。
こっそり様子を伺うと馬車は目的地に着いたようだった。


「よっと・・・」



荷物を抱え荷台から降りると車庫のような場所から外に出る。
その先に広がる景色に感嘆の声が漏れた。


レンガ造りの建物に道路。



とても美しい場所だった。




「ここが、城下・・・」




人々が行き交い、笑い声や話し声があちこちから聞こえる。
とても穏やかで明るい街に思えた。

見慣れない街並みに見惚れながら歩き出す。



ちょうど昼時のためか街のあちこちからはいい匂いが漂う。



そんな街並みを見て歩きながら、次第に路地裏に迷い込んでしまっていた梨乃。




「あれ、ここ・・・」



来た道がわからなくなってしまったことに気づいて立ちどまった。