「・・・支えなんか・・・いらねぇ・・・離せ・・・」
「離さない。離したり、絶対にしない」
シドの身体に手を回した梨乃は、ギュッとシドを抱きしめた。
こんなに近くにいる。
もう、会えないと。
もう、触れることができないと思っていたのに。
ふと、後ろから手が伸びてきて、シドの身体を支える。
「・・・クロウ」
「一緒に、部屋に運びましょう」
「うん・・・」
声をかけ合い、それでも抵抗をしようとするシドを宥めながら部屋に戻す。
ベッドに寝かせると、ベッドの側に二人は立つ。
「無事でよかった」
「ごめんね、シド・・・。置いていってしまって」
心配そうな二人の視線に、居心地悪そうに視線を反らした。
どうにか助けた後は、すぐに姿を消すつもりだった。
まさか、怪我をして動けなくなるとは誤算だったのだ。