「今でも、きっとあいつは、プリンセスの事を一番に思っていると思います」
ロイのその言葉が頭の中で響く。
涙を拭いシドが手当てを受け眠っている部屋に向かっていた。
バタバタと慌ただしく人が通り過ぎていく。
本来なら、歓迎を受けていたはずだった。
こんな形で逃げ込むことになるとは。
プリンセスになると決め。
歩きはじめて、何度も命を狙われ、悪意や殺意を向けられた。
いつになってもそれに慣れることはなく。
ただひたすらに。
自分の無力さや、非力さを痛感するだけ。
部屋の前までたどり着くと、ノックをしようと手を伸ばした。
その時、突然中から扉が開かれた。
梨乃はハッとし、一歩下がる。
誰か看病をしてくれていたのだろうかと出てくるのを待った。