シドが梨乃を連れ馬車を飛び出したのと、岩が馬車を直撃したのは、ほんの一瞬の差の出来事。

吹き飛ばされるようにシドと梨乃の身体が地面に叩きつけられた。


護られるように身体をきつく抱きしめられ地面に倒れこんだ梨乃。
シドの腕の中から、馬車が岩に押しつぶされそのままがけ下に落ちていくのが見え、身体が固まった。



「第Ⅲ部隊は襲撃犯を追って下さい!他は、その他の襲撃に備えてください!」



辺りは騒然としている。
クロウがシドと梨乃のもとに駆け寄ってくる。



「・・・、おい、こいつを連れて早くこの場を移動しろ」

「シド・・・、どうして・・・」

「・・・お前を、護るって・・・約束、しただろ・・・・」




腕の中から梨乃を開放すると、シドは梨乃をクロウに押し付けるように渡した。
荒い息を繰り返しながら、そうシドは笑って言った。



「し、シド・・・?」

「あなた、怪我を!」

「え・・・?」